アメリカ憲法への誘い

アメリカ合衆国憲法と連邦最高裁判所「正義の言葉」
The Constitution and the Supreme Court of the United States

秋葉丈志
Takeshi Akiba
アメリカ合衆国憲法と、同国連邦最高裁判所の判例を紹介する(語る)ページです。 焦点は第1修正(First Amendment)と第14修正(Fourteenth Amendment)です。 なおテキストはすべて筆者による訳(かなりの意訳を含む)で、公定訳ではありません。
Updated 2/18/2020 Impressions from attending a Supreme Court argument on union speech 連邦最高裁判所 傍聴体験記(英文)
<第1修正> First Amendment 信教の自由、言論の自由
連邦議会は国教を樹立する法または信教の自由を侵害する法律を 制定してはならない。 (連邦議会は)言論の自由または報道の自由を侵害する法律を 制定してはならない。 (連邦議会は)人々が平穏に集会する権利また苦痛からの救済を 求めて政府に請願する権利を侵害する法律を制定してはならない。 -解説- アメリカ合衆国憲法の権利章典の冒頭を飾り、 民主的な政治体制の要である言論や報道の自由、集会・請願の権利を保障する。 言論の自由は、思想・信条の自由や、言論に欠かせない正確な情報を得る権利 (知る権利)を含むに至っている。 合衆国憲法は権力を重度に警戒する憲法である。 そのため合衆国憲法本文は、連邦の法律制定権力を連邦議会にのみ与え、 議会が定めてもよい法律の種類を列挙した。 一連の人権保障規定は議会が定めてはいけない法律の種類も列挙することで、 議会の権力をさらに抑制しようというものだ。 第1修正は、議会が国民の言論や報道の自由を侵すことを特に禁じている。

<第14修正 第1項> Fourteenth Amendment 市民権、法の下の平等、適正手続の保障
合衆国に生まれ、または帰化し、その管轄下にあるすべての人は、 合衆国並びにその居住する州の市民である。 いずれの州においても、合衆国市民の特権ないしは免責特権を制約する 法律を制定ないし執行してはならない。 また、いずれの州とも、いかなる人の生命、自由、または財産 であってもこれを法の適正な手続なしに奪ってはならない。 また、(いずれの州とも)管轄下にあるいかなる人についても、 法による平等保護を否定してはならない。 -解説- 合衆国憲法上もっとも運用が拡大され、政治的紛争の焦点となってきた条項である。 南北戦争(奴隷制の是非をめぐって合衆国の北部と南部が激しく戦った)に おいて、奴隷制反対の北部が勝利した結果として第13修正<奴隷制の廃止>、 第15修正<選挙権の平等付与>とともに制定された。 つまり、制定の趣旨としては解放された奴隷を含む、黒人に対する 白人同等の権利保障を意図している。 しかし、第1項はこうした経緯に言及せず、その適用をあえて 人種問題に絞ることはしなかった。実際、第1項は経済的自由の拡大に 利用され、最低賃金法などの労働立法が契約の自由を奪うものとされた 時期(20世紀初頭)がある。 第14修正の本来の趣旨は、制定からまる一世紀を経た1960年代前後に ようやく生かされた。この時期、黒人市民権運動を中心として、差別反対、 市民権の平等付与を求める運動が女性や障害者などあらゆる社会階層に 広まり、連邦最高裁は第14修正を積極的に適用してその実現を法的側面から後押しした。 これに対し、80年代以降保守派による巻き返しが顕著となり、 差別是正のために少数人種を有利に扱うプログラムが白人に対する 「逆差別」であるとして第14修正の標的になるなど、再び第14修正の 意図が問われる事態に発展している。 ブラウン 対 教育委員会事件 (人種別教育) Brown v. Board of Education (1954) コレマツ 対 アメリカ合衆国事件 (日系人の強制収容) Korematsu v. United States 「女性別枠」入試と憲法感覚
About the Author 筆者: 秋葉丈志 (Takeshi AKIBA) カリフォルニア大学バークレー校大学院 法社会政策博士課程 修了。秋田県公立・国際教養大学教員。 The author received his Ph.D. from the Jurisprudence and Social Policy Program at University of California, Berkeley. He currently teaches the U.S. Constitution at Waseda University, Japan. 筆者によるテキストの日本語訳並びに解説について著作権法による権利を留保します。 メール(e-mail)はこちらへ。リンクはご自由にどうぞ。

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