連邦最高裁「正義の言葉」(その1)
秋葉 丈志
ブラウン対教育委員会事件(1954年)
BROWN v. BOARD OF EDUCATION, 347 U.S. 483 (1954)
“Separate educational facilities are inherently unequal”
教育施設における人種の分離は本質的に不平等である。
「言葉」の解説
公立学校における白人と黒人の分離教育の違憲性が問われた事件。
南北戦争による奴隷解放後も、人種の融合は進んでいなかった。
連邦最高裁もそれまでは「人種別の施設でも、それぞれが同等で
あれば法の下の平等には反しない」(Separate but Equal)としてきた。
これに対しこの判決は、学校教育に関して人種分離の正当性を
真っ向から否定。人種別教育はそもそも根底に人種差別があり、
平等ではあり得ない、従って第14修正の「法の下の平等」に
反すると断じた。
アメリカで最も政治的禍根の深い問題で、裁判所が政治部門の
判断を乗り越えて人種差別を指弾したことで、判決は全米に
波紋を巻き起こし、南部を中心とした強い抵抗に直面した。
また、司法判断のあり方としても、人種分離による
子どもへの精神的影響など、学問的考察を判断の中心に
据えたことで、賛否両論を呼んだ。
さらに注目されたのは、この判決が裁判官全員一致による
ものであったことである。このことが判決のインパクトを
一層強めた。その後の研究では、全員一致でなくては
これだけ踏み込んだ判決は出せないという前提で、
ウォーレン長官が他の判事との交渉に苦心したことが
明らかになっている。
この判決を執筆したウォーレン長官はカリフォルニア大学
ロースクールから地区検事になり、さらに民主、共和両党
の推薦という異例の人気でカリフォルニア州知事になった
人物。その政治的「勘」をもとに、連邦最高裁長官として
憲法史に残る画期的な判決をいくつも下した。
判決全文 (FindLaw)
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