秋田おすすめスポット・3

西馬音内盆踊り2012:心に響く幽玄な舞 Nishimonai Bon-odori (traditional dance as part of ancestral rites, Akita) 秋葉丈志 Takeshi Akiba

8月18日、秋田県羽後町に伝わる西馬音内(にしもない)盆踊りを 見学に訪れた。 「盆踊り」といっても非常に特殊なもので、基本的に女性の踊り子が 編み笠あるいは頭巾(彦三=ひこさ頭巾)で顔を隠して踊る。 そして、哀愁を帯びた笛と太鼓、鼓の音と独特の歌(地口)に合わせ、篝火の周りを舞う。 この踊りはとにかく美しい。 複雑な型を子どものころから母親について徐々に身を付け、 熟達するとともに出番や衣装(端縫=はぬい)に格が与えられる。 20代、30代と踊り続けるうちに円熟味が増し、「こなす」踊りから 型を踏まえつつ表現力のある踊りになっていくのだろう。 (こちらの映像ドキュメンタリーが、祭り前後の町の様子も捉え、優れていると思う。 http://www.youtube.com/watch?v=gKbhY2goSA4世代越える思い 以前、踊りに見とれて、保存会の方が講師を務める講座に参加したことがあった。 しかし、不器用な私は手も足も付いていけない。手だけ、足だけの動きでも 複雑である。両手両足、頭に腰、全身の動きを調和させ、輪になって 等間隔で、しかも顔を隠し周囲がよく見えぬ形で踊るなど、できそうにもない。 ただ西馬音内盆踊りの深さは技術の問題だけでないだろう。 地区内の者が輪の中での踊りを許され、祖母、母、娘へと 踊りも衣装も伝えられてきた人の営みがその真髄ではないだろうか。 この踊りは幼子の頃から母親の後について覚えるものである。 その向こうには祖父母の顔もある。小さい頃から盆踊りの時期には 親戚家族が集まることも多かっただろう。 思い出すのは家族、親戚のことだけではない。10代後半、20代、 格上の衣装を纏うことが許されたとき、友人や恋人が、その舞いに 居合わせていたのではないだろうか。 そして円熟した踊り手ともなれば、毎年お盆の時期に踊ってきて 50年、60年の思い出があろう。 優美な舞は、それらを凝縮した境地ではないのだろうかと、思えてしまう。 西馬音内盆踊りの起源は、亡き者を弔う踊りにあったとも言われる。 より広い意味で、過ぎしものへの思いの篭った踊りであることは その舞と音色からひしひしと伝わってくる。 普遍的な価値 西馬音内盆踊りは伝統的な農村集落で発展し維持されてきた民俗文化である。 同時に、羽後町はこれを積極的に外へ伝え、保存会が町内の学校、 またそれに留まらず県内の文化センター等で伝承講座を開いているほか、 国内外各地に公演に赴き、内向きに留まらない取り組みをしている。 それがたくさんの人たちの心を打ち、この集落に日本中から観光客が訪れるのは、 その舞がそれだけ人々の心を打ち、共鳴を呼び覚ます力を備えているからだと思う。 私もその恩恵に授かることができてよかった。また訪ねたい。
西馬音内盆踊りについて Information (以下は秋葉によるまとめです。公式情報は主催者HPなどで確認してください)
<概要> 国指定重要無形民俗文化財。 秋田県雄勝郡羽後町西馬音内(にしもない)地区で、毎年送り盆の頃、3夜連続で開かれる。 自家用車で行くか、「読売旅行」などが県内外各地から出しているバスツアーが便利。 鉄道だと最寄りの湯沢駅からタクシーを利用。 町の中心部の本町通り一帯で踊られる。一部有料席もあるが、座っているよりも 立っている方がよく見えたりする。 (有料席は「盆踊り会館」内で当日販売もあったが、6時前に売り切れていた) 午後7時半、まず子どもたちの舞から始まる。 母親に付いて踊りを学ぶ幼子も多く、たまに演技派の子がいたりすると観客が沸く (逆にたくさんの人に怖気づいて母親の足にすがりついたまま離れない子もいたりする。) 午後9時ごろから第二部。ここから大人の踊り手が登場する。 手つきや体の動きにしなやかさが加わり、艶やかな舞となる。 午後11時ごろに踊り終えるが、最終日は少し延びる。 歌い手(地口)の秋田弁(実は艶物だったりする)も大きな魅力。 <観覧の準備等> 暗くなってから始まるため、そんなに暑くもなく過ごしやすい。 半袖か薄い長袖でよいだろう。河川敷でもないため、虫よけも必要なかった。 近辺に出店も多く出るほか、商店街の各店がお土産を販売する。 近隣の公共施設が開放されトイレも利用できるが、女性はかなり並ぶので注意。 雨天の際は屋外の踊りは中止。その場合、近くの屋内施設で踊られたこともあるらしいが、詳細は不明。 羽後町観光物産協会HP 歴史・交通手段など (Official website)
秋葉の「秋田おすすめスポット」 (Places to see in Akita) 秋葉丈志のホームページ (Takeshi Akiba's website) 2022.9.23 一部リンク修正