秋田おすすめスポット・4

大日堂舞楽:知られざる世界遺産 Dainichido-Bugaku (Hachimantai, Akita) 秋葉丈志 Takeshi Akiba

2013年1月2日、秋田県鹿角(かづの)市八幡平(はちまんたい)の大日霊貴(おおひるめむち)神社に伝わる大日堂舞楽を見学した。 毎年1月2日に行われるこの伝統行事は、1300年の歴史を持つとされ、地元の4集落の住民が代々継承してきた。 様々な面を被り、独特の囃子にのせて個性的な舞を披露する人々。 それを幾重にも取り囲む地域住民、観光客たち。 霊気漂う厳かな雰囲気の神社本堂。 舞台も舞も、一朝一夕では完成しないものだ。 例年1月2日早朝より正午にかけて舞われるこの行事の踊り手たちは、 本舞台の一月も前から身を清める儀式が始まり、一週前からは家族ぐるみで 神聖な舞台を前に食事などにおいて様々な禁忌を経て臨むのだという。 鹿角市八幡平は秋田の中でもさらに奥地とでもいう場所、雪が深く積り、 山に囲まれ、いまでこそ車や電車で到達できるがかつては相当孤立していたことだろう。 そうした秘境で紡がれ維持されてきた大日堂舞楽は古来の舞いや格式を随所に残しているとされ、 舞いの由来に関する様々な伝承と合わせ、希少価値を認められてきた。 その結果、国においては、重要無形民俗文化財の第1回指定を受け、 さらにユネスコにおいて人類の無形文化遺産と認定されている。 ユネスコの人類無形文化遺産認定記録 保ち難い伝統文化 ただ残念なことには、地元秋田の人でさえ「知らない」「行ったことない」 という人が多いことだ。他県での認知度はさらに低いだろう。 さらには、本元の主催者においても、この行事の継承に苦労しているということである。 少子高齢化の波が著しい秋田県では、各村落に残る伝統行事が次々と 中止・消滅の危機に瀕している。 「大日堂舞楽」も例外ではなく、代々特定家系の子に伝承されてきた 「鳥舞」は当該家系の本家でも分家でも継ぎ手となる子がいなくなり、 集落全体に対象を拡大してようやく踊り手を見つけたという。 一つの役を一人の人が年々踊り続ける伝統行事の世界に対し、 今日の社会は進学・就職に伴い外へ出ていかざるを得ない人が多いのが実情。 本質的に日本の伝統行事は保ち難い状況になっている。 目の前にある希少なもの 海外旅行などは相変わらず人気で、ヨーロッパの教会や祭りを訪ね歩く日本人は多い。 しかし、同様に希少価値があり、他で再現できないものは、 足元の日本各地にあり、その多くが永年伝承されたものでありながら、 今この世代で消えかかろうとしている。 足元にある、他にはないものに目を向けたい。
大日堂舞楽について Information (以下は秋葉によるまとめです。公式情報は主催者HPなどで確認してください)
<概要> 国指定・重要無形民俗文化財。ユネスコ認定・人類無形文化遺産。 秋田県鹿角市八幡平の大日霊貴神社で例年1月2日に開かれる。 最寄駅はJR花輪線の八幡平駅で、神社は駅のほぼ目の前にある。 花輪線は大館や盛岡(いわて銀河鉄道直通)から乗り継げる。 この舞は早朝より準備が始まり、朝8時ごろから種々の儀式を経て舞われる。 冬の秋田の列車事情は雪や風に左右されるので、 筆者の場合、念を入れて近くの鹿角花輪駅付近の宿に前日から宿泊した。 そこからは列車でもタクシーでもすぐなので、行事を最初から見ることができる。 車で来る場合、鹿角の「道の駅かづの」に駐車し、そこからこの行事のために 運行されるシャトルバスで往復することもできる(2013年の場合)。 大日堂舞楽公式ホームページ
秋葉の「秋田おすすめスポット」 (Places to see in Akita) 秋葉丈志のホームページ (Takeshi Akiba's website) 2022.9.23 一部リンク修正