最高裁大法廷判決について


本日(12月16日)の最高裁大法廷判決2件(再婚禁止期間に関するもの及び夫婦別姓に関するもの)についての初期所感 再婚禁止期間 民法において、女性のみ、離婚後180日間再婚が禁じられていることが憲法14条の求める 「法の下の平等」に反しないかが問われた判決で、100日を越える期間については 合理性がないとしてこの部分を違憲とする判断。 違憲判断については、全裁判官一致だが、このうち2名の裁判官は、100日を越える期間 ということに限らず、再婚禁止期間自体が違憲としたことにも留意したい。 欧米においては、再婚禁止期間自体がないところが多いという。 これに対して、今回の判決は、再婚禁止期間自体を否定はせず、100日を越える部分のみ 違憲とした。父親の推定に関する2つの民法規定が重複する部分が100日であり、 この重複を避けるために必要である100日間の再婚禁止期間には合理性を認めたことにもなる。 国会の対応には選択肢がある 今回の判決を受けて、法務省は再婚禁止期間を100日に縮小する法改正を準備しているという。 しかし、いまひとつの選択肢は、再婚禁止期間自体を撤廃することである。 最高裁は、100日を越える再婚禁止期間は違憲としたが、100日までの 再婚禁止期間は政策上の選択に委ねられるということである。 果たして、再婚禁止期間という発想自体を今後も維持する必要があるのか、 議員もしっかり議論してほしい。 夫婦別姓 夫婦に同一の姓を求めることが結果的に大半の女性の改姓を強いることになり、 憲法13条により導かれる人格権や、憲法14条の法の下の平等、また特に 結婚における両性の平等を定めた憲法24条に違反すると訴えたもの。 裁判所の結論は憲法には違反しないというものであったが、これについては 10対5と法廷が割れ、特に3名の女性裁判官全員が反対意見(違憲判断)に 回ったことに留意したい。 振り返ってみれば、婚外子の相続分を嫡出子の半分とした民法の相続に関する規定を 巡る憲法訴訟でも、1995年の大法廷判決は今回同様に10対5で、合憲としたものの、 その後、小法廷や下級審で異論が続出し、ついに2013年には判断が覆り違憲判決が下された。 夫婦別姓に関しても、現在の働く世代、若い世代ほど、選択的別姓を支持し、 職場等においても引き続き旧姓を使用する慣行が拡大していることを考えると、 今後も訴訟が続き、10年、20年のうちには「社会の変化」を反映した新たな 判決が下ることになるかもしれない。 流れを汲みつつ慎重姿勢 いずれの判決も、家族観に関して、新たな傾向を打ち出した2008年の国籍法違憲判決、 2013年の婚外子相続規定違憲判決の流れを汲み、方向性としては、時代や価値観の 変化を法がより的確に反映することを求めている。 ただ、裁判所として違憲判断を出すことについてやや慎重な姿勢を取り、 国会に多くの政策裁量の余地を残した。 日本国憲法の求める両性の平等に、国会はどの程度前向きな検討をしていくだろうか。 秋葉丈志 (2015.12.16) 2015.12.17改 戻る