大地震対策の不足点 1.外国人の防災教育 1b.列車内被災の場合の対応 2.政府の存続 3.企業の存続
思うところの多い話なので、随時この記事をアップデートしながらまとめていきたい。 2011年3月11日に東北地方・太平洋沖でM9.0の大地震があり、大津波、原発の水素爆発などで前代未聞の被害が出た。 こうした中、なお、国の防災対策に必ずしも十分な取り組みがなされていると思えない箇所がいろいろあると感じる。 1.外国人の防災教育 今回の地震は、YouTubeなど動画サイトの発達で、地震発生中及びその直後、 津波の発生時など多岐に渡り、「その瞬間」の様子があらゆる角度から見られる。 その中でも気になるのは、日本語学校あるいは空港、観光名所などにおける、 外国人の防御反応が鈍い・遅いことである。 机の下に入る(落下物被害の防止)、しゃがむ(転倒防止)などの防御反応が少ない。 日本人が静かに安全な防御反応をしているのに、外国人が "where do we go? where do we go?"(どうしたらいいんだ)とパニック状態になり、 より危険な場所へ日本人も連れて飛び出す場面さえもあった。 こうした様子は外国人が撮影したものが多い。このため、YouTubeなどの 英語版のサイトで"narita earthquake" "earthquake japan"などで 検索すると多数出てくる。現時点では下記のような事例がある。 事例1:成田空港の対応△ (立ち尽くす人、悲鳴も。外国人対応に慣れているはずの空港内だが、 既に物が落ち始めてからようやく店員がしゃがませる動きに出た。<注2> 地震の最中、館内放送も職員からの指示もなく、 もともと対応の仕方を知らない限りどうしたらいいかわからないままだった。) 周囲が気づいて行動の仕方を教えると、また都心の多国籍企業などが入る高層ビルでは 英語による自動音声が流れて、それに従って外国人も行動している。 事例2:森ビルの対応○ (観光客の集うビル展望階。二ヵ国語のわかりやすい館内放送で人々が落ち着く。 少し遅かったが、職員の落ち着いた指示と身ぶりで全員しゃがんだ。) 要するに「誰も教えてこなかった、発生時に教えようとする人もいなかった、 言葉あるいは行動で伝達できる人もいなかった」場合が問題である。 机の下に入るなど一見「幼稚」な行動に見えるかもしれない。 しかし、震災の様子を捉えたビデオの中には、テレビや棚、あるいは大型家具が 倒れる様子を映したものも多い。 人が潜った机の上に家具が落ちてくる映像さえもあった。 これは潜るか逃げるかしていなければ大けがをしていたものである。 これだけの地震大国なのだから、観光客はおろか日本語学校などに在籍し、 長く滞在している外国人でさえ基本的な防御反応を知らないのは どうかと思う。日本語学校はそういう訓練をすべきだし、 旅行ガイドや入国時の案内に基本的な動作の説明をしておくべきだろう。 実利的な意味合いでも、このまま外国人を巻き込む大災害が起きれば、 今回撮影されたような動画を証拠に、巨額の損害賠償請求訴訟が 日本の行政機関や企業、ビル管理会社、交通機関などを相手に争われる可能性もある。 1b.列車内被災の場合の対応 比較的安定した防御行動が見られた日本人の中でも、迷いが多く 反応が二分したのが、「ホームに止まった電車内」で大地震に 遭遇したパターンである。 この場合、電車の中からホームに出る人と、逆にホームから電車に 入る人と両方向の動きがあった。 急いで電車から出ようとしてドア付近の人を押しのけたり、 ホームに出たところで天井からつり下がる様々なものが大きく 揺れて落ちそうになっているものなどもあった。 列車で被災した場合の対応の仕方について、聞いたことはないように思う。 2.政府の存続対策 東京で大地震が起きれば、万が一の可能性とは言え、 政府機能・人材が大量に失われる可能性がある。 そうした場合の「政府の存続」対策はなされているのだろうか。 アメリカでは"continuity of government plan"といって、 もともとは核戦争などで政府中枢機能が失われた場合に備えて作られた、 アメリカが国家として存続できる予備体制を準備している。(注1) 「政府の存続」に関する合衆国連邦議会調査局の報告書はこちら (Federation of American Scientistsのウェブサイトより) (たとえば、大統領に関しては念には念を入れて継承順位を 18位まで定め、各省庁の大臣についても役職代行順位を定めている) 3.企業の存続対策 東京で大地震が起きれば、これも万が一の可能性とは言え、 大企業の機能・人材が同時に大量に失われる可能性がある。 国も企業も、そうした場合の「企業の存続」対策を考えているのだろうか。 具体的には「首都大地震で東京本社の機能・人材が失われた場合に 誰が企業の存続を担うのか」各企業は対策を立てているのだろうか。 大げさな話にも聞こえるが、M9.0の大地震など誰も 想定していなかったという。 これに対し首都の大地震は30年以内に7割の確率、あるいは、もっと切迫した 可能性も提示されている。 原発が水素爆発を起こしたくらいなのだから、従来「想定外」だったような 深刻な事態も想定した、政府・企業の存続対策も必要ではないだろうか。 秋葉丈志 (2012. 6. 5)(6. 9事例追加) (注1)全貌が知れるとそれ自体が安全保障への脅威になることから 一定の機密性があり、このことに民主制との関連で批判や懸念が示される ジレンマにも直面してきた。但し、相当程度、情報公開あるいは議会の 調査によって内容が明らかにされている。 (注2)但しYouTubeのコメントにも、「店員が客を庇う」美談として 感心しているものもある。一部店員が最終的に取った対応は評価されるべきだろう。 しかし、一方では何かしら客に対応できる位置にありながら、何もしていない 店員も多く映り込んでいる。百貨店などの映像には、職員一人ひとりが 何かしらの対応を取っているものもあり、空港ではそれを超える訓練 (外国人に対応したもの)があってもよいように思う。 戻る キーワード: 地震 防災 防災教育 避難誘導 減災 震災対策 損害賠償請求 緊急事態 政府(国家体制)の存続(continuity of government)