消費増税法案 閣議決定に思う 消費税増税法案が、民主党内の反対意見や、連立政権を組んでいた国民新党の亀井代表の離脱などを乗り越えて、閣議決定された。 思い付いた点をいくつかコメントしたい。 首相のリーダーシップ *一般的に不人気とされる増税案であるが、その必要性を一貫して説き、ぶれることなく 自らの名において閣議決定まで導いた野田首相の姿勢は(賛否に関わらず) 政治家のあるべき姿として評価できると思う。 *しかも、その過程では、党側に調整を委ね、修正を重ねるなど、芯を維持しつつ 合理的な妥協をしており、調整型政治的リーダーシップの型を提示していると思う。 税と社会保障について *「いまは増税するときでない」という主張は反対論の中で一番説得力がない。 では、いつならいいのか。日本の過去20年を見ても、当面を見ても、 「現在の経済情勢」を持ち出したらいつになっても増税などできない。 *しかもその間に病(国を破たんさせかねない莫大な借金)は悪化するばかりである。(注1) 現在のような放漫な社会保障支出をしながら、なおかつ税金を低く抑えて、 財政が立ち行くはずはない。家計ならとっくに破たんしている。 政治家たちは、自分の家庭の財政状況と同じように、国の財政状況を気遣ってほしい。 *一般的に「社会保障と税」の考え方には二つの方向性がある。 「大きな政府=福祉国家」では、社会保障を充実させ、その分税金も高くなる。 「小さな政府=(経済的)自由主義」では、社会保障は(国民全員ではなく)特に必要な弱者に限定し、その分税金を抑える。 支出をするなら税金を増やす or 支出しないで税金も抑える。そのどちらかである。 支出はして税金は取らないという姿勢は、論理的に成り立たない。 (経済全体のパイが拡大すれば税を上げずに支出も増やせるだろうが、これまで何度も その論理で増税を見送ってきて、その間に病は初期から末期に進展しつつある) *上記の点をより明確にするためには、政府には増税案だけでなく、 「増税しない場合に社会保障をどの程度削減したら、財政は均衡するのか」 国民に示してほしい。そのことで、「社会保障と税」の関連性はより明確になるだろう。 政治家の役割 *党内対立自体は健全なことである。そもそも「党議拘束」という考え方には違和感を覚える。 アメリカの例であるが、主要な法案で、それぞれの党内で意見が割れ、党を越えた 票の奪い合いになることは珍しくない。 議員はまず国民の代表であり、党は議論促進の手段である。 党が国民代表である議員を縛る本末転倒になってはいけない。 *増税慎重・反対派は、責任を持って、国を破たんさせない方策を示してほしい。 増税の前の歳出削減努力が足りない、というが、総論にとどまらず、 どこを削ったらいいのか、具体的に示してほしい。 (2012.3.31 秋葉丈志) 注1 2012年度予算案では、収入のおよそ半分が借金(国債)により賄われる。 月収20万の人間が月20万借金して毎月40万円支出していることになる。 収入を大幅に超える支出で抱え込んだ借金(公債残高)は2012年度末(見込)で709兆円、 これは2012年度税収(見込)42兆円の約17倍である。(財務省資料) (年収300万円の人間が5000万円近い借金を抱えているようなもの) 借金を返すためには収入が支出を上回らなければならないのに、 逆に収入の2倍もの支出をしてさらに借金を膨らませている状況である。 (2012.4. 6 データ追加) 戻る