下記の記事を掲載したのは2011年7月であるが、またもや一年で首相交代論が出ている。
国会も国民も腹を決めて、一人の人に最低3年は託すべきだ。短い期間では何もできないし総合的な評価もできない。
内閣不信任や衆議院解散は憲法上例外であるはずなのに、常態化してしまっている。(2012.9)



時評:マスコミは政治家の政策を問うてほしい



政策不在の人事抗争

先月、菅首相が「辞意」と解釈できる発言をして以来、
相変わらず、「いつやめるのか」「次は誰か」を巡る論争が続いている。

そして不思議なことに、やめる政策上の理由も、次は誰が有力なのかの
政策上の理由も、ほとんど議論されていない。

試しに問うてみたい。

代わりの首相の有力者として、
民主党であれば前原誠司氏や枝野幸男氏、野田佳彦氏の名前が取りざたされている。
自民党であれば谷垣総裁のほかに、石破茂氏の名前がよくあがる。

では、前原氏や枝野氏、野田氏が首相に就任したとして、
彼らがどういう政策を推進するのか、国民は知っているのか。
この3人の誰かが首相になったとして、菅首相と政策上何が変わるのか。

また、石破氏や谷垣氏が取って代わったとして、原発・エネルギー・
震災復興について、民主党政権とどういう政策上の違いがあるのか、
国民は知っているのか。

不思議なことに、マスコミの報道は、こうした有力候補の政策の違いに
ついてほとんど取り上げていない。

党内の人事抗争とその報道から肝心の政策論争が欠如している中では、
選挙で政策の違いをより前面に出そう、という発想も頷けるところである。


政策なしの国家代表?

最近、アメリカからの留学生に、「大統領を政策論争抜きで選べるか」と
問うたら、あり得ない、と言われた。
それぞれの党が大統領選に推す候補を選ぶ党内の予備選挙でも、
候補の人間性はもちろん、政策が、討論会などで徹底的に争われる。

では、一国の首相をやめさせて別の首相を出そうという論争の中で、
政策の話がこんなにも欠如していてよいのだろうか。

政策論争抜きで選んだ次の首相は、政策で選ばれていない以上、
思い切った新しい政策を打ち出すことはできないか、
打ち出した途端に批判が起こって、また辞任に追い込まれるのではないか。

また、独自の政策を打ち出す力を持てないような首相が、外交交渉の場で
国際合意をまとめ上げて、国内でそれを実行することができるのだろうか。

「次の首相は、少なくとも3年続けて務めなければ国際社会の信頼を失う」
「今後も短命政権なら、外交交渉の場に日本の首相が呼ばれなくなってもおかしくない」

そういうつもりで、人物・政策を徹底的に問い、そのうえで選ばれた首相が
長期安定政権で自信を持って政策を推進できるよう、特にマスコミに責任を求めたい。


(2011. 7. 7 秋葉丈志)


<参考> (2012.9アップデート)

日米中の首脳交代

日本:2001−06 小泉、06−07 安倍、07−08 福田、08−09 麻生、09−10 鳩山、10−11 菅、11−現在 野田
アメリカ:2001−09 ブッシュ、2009−現在 オバマ
中国:1993−2003 江沢民、2003−現在 胡錦濤

日本:この10年で7人
中国、アメリカ:この10年で2人


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