時評:政治の安定を望む 国民無視の不信任騒動 震災復興がまだ端緒に付くか付かないかという中で6月2日、 降って湧いたように内閣不信任案が提出され、一時は可決されるかと いう流れから採決当日に情勢が急転し、大差で否決された。 菅首相が鳩山前首相と会談の上、震災復興が一段落した段階で 若い世代に責任を引き継ぐ、と述べたことで民主党内で不信任案に 賛成を検討していた勢力が矛を収め、否決に至った。 ところが、菅首相がいつ辞任するのかを巡って、党内がまた割れているという。 おそらく大多数の国民の考えを代弁したい。 内部抗争はやめていまは震災復興に専念するべきである。 首相を交代させなければ復興も覚束ない、という考えがよくわからない。 復興に必要なのはリーダーシップであり、コミュニケーションであるが、 いま首相や各省の大臣・副大臣が交代すれば、官僚との意思疎通も 地元とのコミュニケーションも一からやり直しではないか。 まずは顔と名前、お互いの性格などを知るところから人間関係ができ、 仕事が進められるようになることは、どういう組織でも同じはずである。 政権の初動対応が遅かったことや様々な不備があったことが露呈して、 それは検証を迫られている。しかし、いま首相を交代させることは、 混乱に拍車をかけるだけで解決策になるとは思わない。 先進国の名に値しない「毎年交代」 日本の首相が毎年毎年、交代することも問題だ。 不満があればすぐ首相を交代させられる、という安直な考えがはびこっていないか。 先進国のほとんどで、大統領や首相は4年から8年の任期を全うする。 その間、一時的に国民の不満が高まり、支持率が急落することだってある。 しかし、その瞬間にそれが交代につながりかねない近視眼的な国は日本だけだ。 他の国との会合でも、日本の首相や大臣は「来年はいないだろう」と軽んじられ、 顔も覚えてもらえないだろう。 高低、波がある中で数年政権を担当させ、その総合評価で次の選挙に臨む。 そういう形を確立してほしい。 ましてや、未曾有の大震災という状況の中で、よくわからない表向きの理由 と内部の権力闘争で首相を交代させようという発想は、国民感覚からも 著しく逸脱していると思う。 いま望まれているのは安定的な取り組み 国民の大多数は、民主党や菅首相を個人的に支持しているかどうかは別として、 いまが政権交代や政治的混乱のタイミングだとは思っていないだろう。 国民が判断する機会は先にある。いまはまず、今いる人たちで 安定的に復興支援にあたってほしい。そう思う人が大半ではないだろうか。 (2011. 6. 4 秋葉丈志) 戻る